ミンダナオにおける零細農民の金融アクセス改善
本ページはJICA草の根技術支援事業「ミンダナオにおける零細農民の金融アクセス改善プロジェクト」のプロジェクトブログです。
2012.2.8 プロジェクトについて②-1(金融リテラシートレーニング)
しばらく間が空いてしまいましたが、引き続きプロジェクトについての解説をいたします。前回の内容は、「零細農民のニーズに適したマイクロファイナンス商品の設計・導入」という貸し手側の問題でしたが、今回は、借り手側、つまり貧困層に対する金融リテラシートレーニングの普及の問題です。ミンダナオの零細農民には、金融リテラシー、つまり収入・支出、貯蓄、借入といった要素の基本的な考えを正しく把握し、非常時に備えて貯蓄をおこなったり、将来に向けて投資をするといったように、財産を賢く運用できるようになるためのトレーニングが必要とされています。
たとえば、一般的に貧困層は小額の資金をやり繰りし日々の支出を賄うことは非常に得意だとされていますが、緊急時や冠婚葬祭、学費の支払等、まとまった額の出費に備えることが苦手とされています。これは、季節性を考慮して収穫後にまとまった額を返済をしなければならない農業マイクロファイナンスにとっては大きなリスクであるといえます。
そこで、本プロジェクトでは金融リテラシートレーニングを通して収入や支出の管理の仕方、帳簿のつけ方、預金や保険サービスを賢く利用する方法を教え、零細農民の家計や事業資金の管理能力の向上を目指します。零細農民がより賢く資金運用ができるようになることによって、所得や資産の増加はもちろんですが、農業マイクロファイナンスに伴うリスクを削減することがねらいです。
次回は、金融リテラシートレーニング普及の具体的な活動について解説いたします。
(アシスタントプロジェクトマネージャー 松浦)
2012.2.2 パートナーMFI決定
セキュリティの問題で延期になっていたパートナーMFIの選定ですが、最終的に下記の2機関に決定しました!
- Bansalan Cooperative Society (Cooperative/バンサラン(南ダバオ))
- Milamdec Foundation, Inc. (NGO/カガヤンデオロ)
1月30日に、Bansalan Cooperative Society(以下、BCS)を訪問し、パートナーMFIとなることが正式に決定した旨の説明会を行いました。翌31日にはダバオ市内にて、MMCが毎年開催するサウスクラスターミーティング(ミンダナオを東西南北の4区に分けての年次ミーティング)に参加し、他のMMCメンバーMFIに対するプロジェクト概要の説明および、今回パートナーとなることが決定したBCSとのMoA(合意覚書)の署名式を行いました。
BCS代表のErnesto氏から、「私たちのMFIはサリサリストアなどの零細事業者向けのマイクロファイナンス商品を主に扱っており、顧客の多数である零細農民向けの季節ローンなどの商品の導入が長年の課題になっていました。従って今回のプロジェクトには大きな期待をしています。」という言葉をいただきました。
2月3-4日は、カガヤンデオロにて開催されるノースクラスターミーティングにて、Milamdec FoundationとのMoA署名式を行う予定です。その後、2月後半には再び2機関を訪問し、Institutional Diagnostics、つまり彼らが現在どのような方向性のなかでどういった課題に直面しているのか、といった調査を行うため、さまざまなデータを収集する予定です。
いよいよプロジェクトが本格的に動き始めました!
(アシスタントプロジェクトマネージャー 松浦)
2012.1.24 第1回プロジェクト報告会(質疑応答)
2012年1月13日(金)に開催いたしました第1回プロジェクト報告会にて、参加者の皆様からいただいたご質問と、それらに対する回答をご紹介いたします。
Q1)ミンダナオに所在するMFIの平均利子率はいくらか?また商業銀行の利子率はいくらか?
A1) MFIや商品の種類によっても異なるが、実効金利80%ほど。小額のローンを提供するための取引費用が高いため、利子率も高めに設定せざるを得ない。都市部の銀行よりは高いが、インフォーマルな高利貸しの利子率は200~300%にも及ぶため、彼らと比較すると低位である。
Q2)マイクロファイナンスの普及よりも、雇用の拡大のほうが重要ではないのか?
A2)もちろん、雇用を十分に提供できる政府の施策があればそれに越したことはない。しかし、フィリピンを始めとする多くの途上国では、人口増加率に対して雇用創出が追いついていないのが現状。十分な雇用が創出されるまではマイクロファイナンスには重要な意味があると考える。
Q3)バルーンメソドロジーをいままで取り入れてこなかった理由は?
A3)対象としているミンダナオのMFIは、都市部で成功したMF商品をそのまま導入しており、住民のニーズに適した農業マイクロファイナンス商品を開発する段階までいっていない。フィリピンのマイクロファイナンス業界は、他国と比べて発展しているとはいえまだまだ発展段階にあるといえる。
Q4)今後どのような方法で僻地へのアウトリーチを拡大させていくのか?
A4)ニーズアセスメントを実施しなければまだ具体的にはいえないが、たとえばSPMを強化すること、あるいはモバイルバンキングを導入することなどが考えられる。
Q5)台風の被害による影響はどうか?
A5)メディアで報道されているように、1000名を越す死傷者が出ており、まだ行方不明者の捜索がなされている。今月末にカガヤンデオロ市にてMMC主催のミーティングに参加し、MMCやMFIから聞き取りを行う予定。復興支援のためのマイクロファイナンス商品や災害に備えるための保険商品等の可能性が注目される。
Q6)最貧困層向けの融資ではないのか?
A6)MFIにもよるが、対象地域のMFIではビジネスローン(中小零細事業者向けローン)をやっているところが多い。今後のニーズアセスメントでより詳しく調査する。
Q7)担保は取るのか?
A7)今回選択した2つのMFIでは、担保は取っていない。
Q8)プラネットファイナンスグループのほかのプロジェクトで発生した出来事で、今回のプロジェクトに生かせる教訓などはあるか?
A8)EUの助成を受けて実施している先行プロジェクトが存在するため、そこでの経験は本プロジェクトの活動計画立案、予算作成、カウンターパート選定等、あらゆる場面で役に立っている。
Q9)対象作物はどういったものがあるか?また灌漑設備も対象となっているのか?
A9)米、トウモロコシ、ココナッツ、カカオなど。灌漑設備もニーズアセスメントの結果必要があると判断されれば対象となる。
Q10)今回の災害のようなリスクに関する対処として何か予定しているものはあるか?
A10)農業保険の需要はあるものの、保険商品は融資や預金とは異なり複雑な商品であるため1つのMFI単独では成立し得ない。従って、本プロジェクトで保険商品を扱うことは難しい。しかしフィリピン政府が推進している農業保険のプログラムを紹介することはありえる。
Q11)貸付資金はプロジェクト予算に含まれているのか?
A11) 含まれていない。
Q12)SPMの指標としてはどんなものを使っているのか?
A12)SPMの指標はMFIそれぞれのミッションやソーシャルゴールに従って設定されるので、現段階では何を指標に使うかは決まっていない。
Q13)カウンターパートにMFIではなくMMCを選んだ理由はなにか?
A13)MMCはミンダナオのMFIをメンバーとするネットワーク型組織であり、財務諸表などの数字には表れない情報(CEOのリーダーシップの強さなど)を持っているため、MFI を選考するにあたり有益だと考たから。また、MMC と協同でMFIに対して技術支援をおこなうことによって、MMCの能力が強化され、プロジェクトの持続可能性やインパクトの観点から有益だと考えたから。
たくさんのご質問ありがとうございました。次回開催の第2回プロジェクト報告会は2012年7月頃を予定しており、MMCのジェフをゲストスピーカーに迎える予定です!
(アシスタントプロジェクトマネージャー 松浦)
2012.1.16 第1回プロジェクト報告会
明けましておめでとうございます。昨年末はミンダナオを直撃した台風により大きな被害を受け、困難な年の終わりとなりましたが、今年は昨年よりも彼らの生活を少しでも改善していけるように、プロジェクトチーム一同尽力していきます。
2012年1月13日(金)に、新宿区市ヶ谷のJICA研究所にて、プロジェクト第1回報告会を実施いたしました。平日の夜であったにもかかわらず多くの方にご出席をいただき、この場を借りて厚く御礼申し上げます。
報告会では、プラネットファイナンス事務局長の田中和夫の挨拶に始まり、JICA地球ひろばの田和美代子様より「JICA草の根協力事業について」と題し、JICA草の根協力事業の概要についてのご説明を、また、経済基盤開発部の辻一人様から「JICAのマイクロファイナンスに向けた取り組み」と題し、マイクロファイナンスの課題とJICAの取り組みについてご講演をいただきました。辻様からは、マイクロファイナンスには様々なレベルで解決すべき大きな課題がある一方、膨大な潜在顧客と多様な担い手のある現状の姿、また、直近の国際的な話題とマイクロファイナンスに関するJICAの具体的な取り組みのご紹介をいただきました。
そして最後に、開発援助に求められるのは、「イノベーション」の創造とその普及に向けて知恵を出すことであるということ、また、市場の余剰資金をどのように本当に必要な人に届け、彼らの日々の資金管理のストレスから開放するか?そして、マイクロファイナンスという周辺部から、「責任ある金融」を金融部門全体に主流化できるか?というメッセージ・課題をいただきました。マイクロファイナンスに対するJICAのビジョンについて勉強することができ、非常に興味深く刺激的な時間となりました。
その後、プラネットファイナンスプロジェクトマネージャーの長友留奈より、本プロジェクトにおける支援の取り組みについてご説明させていただきました。プロジェクト体制等の基本情報、ミンダナオの零細農民の現状の問題点と、それを改善するためのプロジェクト実施内容の説明、またミンダナオ台風被害の影響等について解説をいたしました。下記に資料を添付していますので、ぜひご覧ください。
次回、ご出席いただいた皆様からのご質問内容についてご紹介させていただきます。
また、最後になりましたが、ご出席された方々からいただきましたミンダナオ台風被害に対する募金額は、総額19,965円となりました。募金額は全額カウンターパートのMMCに届けられ、MMCから被災地のMFIに届けられ、MFIの再建および被災者への支援のために使用されます。多くのご協力をありがとうございました。重ねて御礼申し上げます。弊法人HPにて、引き続きご寄付を募集しています。
http://www.planetfinance.or.jp/news#98
(アシスタントプロジェクトマネージャー:松浦)
2011.12.21 ミンダナオ台風被害
日本でも大きなニュースになっていますが、12月16日~17日にかけてミンダナオ島を襲った台風21号は、20日までに死者957名、行方不明者49名の甚大な被害をもたらしています。(21日共同通信) 特に被害が大きい、北部カガヤンデオロ市やイリガン市には、今回のプロジェクトにも関わりのあるMMCメンバーのMFIが所在しており、被災した家族やコミュニティに対して支援を行っています。しかしながら、災害の規模に対し、MFIの資金にはすでに限界があり、さらなる支援が求められています。
下記のMMCジェフからのコメントにもありますように、フィリピン人は、クリスマスを家族が集まる大切な時間として、とても楽しみにしているのですが、被災した多くの家族にとって、悲しいクリスマスとなってしまいました。 下記に、MMCのジェフからのコメントを添付します。
Dear Friend,
Over the weekend, heavy rains brought by tropical storm Sendong (Washi) left many families devastated. Mindanao is not usually in the path of typhoons, but last week, a tropical storm did pass and caught so many unprepared.
It will be a sad Christmas for many of the families affected by the storm, among them are families assisted by our MFI NGOs.
Poor families in the area are assisted by our MFIs. But with the scale of the disaster, MFI resources have already been stretched and therefore we are now seeking for additional assistance from our partners and friends to help the families affected.
Please feel free to get in touch with us at the MINDANAO MICROFINANCE COUNCIL Secretariat to know more. Our hotline number is 082-3015444 or email secretariat@mindanaomicrofinance.org
We will appreciate also if you can disseminate this message to your friends. Please tell others about it.
Thank you and God bless you!
2011.12.7 ローチングセレモニー
12月1日(木)に、ミンダナオ島最大の都市、ダバオにて、プロジェクトのローンチングセレモニーを開催いたしました。MMCのメンバーMFI、ドナーのJICA、立会人(Witness)のMinDA(Mindanao Development Authority)、そして複数のゲストスピーカーの方々が、忙しい業務の合間を縫って駆けつけてくださいました。
セレモニーでは、プラネットファイナンスジャパン・プロジェクトマネージャーの長友、MMCのジェフがそれぞれプロジェクトローンチの挨拶を行い、またJICAフィリピン事務所の横田千映子様から、プロジェクトに対するメッセージを頂きました。その後、上記3名にて、署名式を行いました。
(写真左:署名式 右からJICA横田様、PFJ長友、MMCジェフ,写真右:MMCメンバーMFIの皆様)
以下、JICAフィリピン事務所、横田様からのメッセージをご紹介いたします。(一部抜粋、翻訳:松浦)
みなさんこんにちは。まずはじめに、プロジェクトが順調に開始されましたことを、MMC、プラネットファイナンス、そしてパートナーのみなさまにお祝い申し上げます。
今回のプロジェクトに資金を提供している、JICAパートナーシッププログラム(JPP)は、2002年に開始され、NGO、大学、自治体などの「日本のパートナー」と共同して、草の根レベルで発展途上国の社会・経済的発展に貢献することを目的として導入された技術協力プログラムです。
これまでに、フィリピンではJPPの54のプロジェクトが実施されてきました。
発展途上国では多様なニーズが存在していますが、そのうちファイナンシャルニーズというのは、非常に基本的かつ重要である一方、従来型のJICAプロジェクトにおいて未だ完全には取り組まれていない分野でもあります。実際、今回のプロジェクトは、世界中のJPPプロジェクトのなかで、初めてのマイクロファイナンスを対象としたプロジェクトとなっています。
JICAの観点から、パートナーとしてこのプロジェクトを導入することに対する価値と期待を申し上げますと、第一に、ミンダナオは、フィリピンでのJICAの活動の中でももっとも重要な地域であるということです。加えて、零細農民への支援は、ミンダナオでの貧困削減にとって不可欠であります。金融アクセスが限定されている、あるいはまったくないことは、零細農民の生活を、最低生活水準から引き上げることを妨げているもっとも大きな要因のひとつであり、私どもとしましても、プロジェクトの結果が大きなインパクトをもたらし、実際に零細農民の生活向上となることを期待しています。
第二に、マイクロファイナンスは、特に貧困削減の観点から、JICAが将来的にもっと焦点を置きたいと考えている重要な開発問題のひとつであるにもかかわらず、フィリピンだけでなく、世界的にみても、マイクロファイナンスプロジェクトの十分な経験をいまだ多くもっていません。さらに、このプロジェクトが取り組もうとしている、農業マイクロファイナンス商品開発、農民の金融リテラシー向上、MFIのSPMキャパシティビルディングを通しての、零細農民の金融アクセス向上といったアプローチは、地域コミュニティ開発プロジェクトに応用されることが考えられます。したがってこのプロジェクトの成果は、フィリピン、また他国でのほかのプロジェクトに広く応用される可能性を大いに秘めています。
第三の、そしてもっとも重要である価値は、このプロジェクトの成果が地域全体に拡大していくように、MMCとパートナーMFIが、サステナブルに、かつ広く応用していくということです。今回のプロジェクトでは、直接的に技術支援を受ける対象となるMFIは限られていますが、MMCが確固たるイニシアチブをもってリードを取ることにより、プロジェクトの成果が、ミンダナオの貧困削減という究極的な目的のために、拡大されていくことを期待しています。そして、私どもとしましても、将来、確かにそうなるだろうというということを確信しています。
このプロジェクトから得られる経験や、成果、教訓といったものを共有できることを、JICAとしても大変楽しみにしています。
ありがとうございました。
2011.11.25 プロジェクトチーム紹介!
今回は、プロジェクト概要説明をいったんお休みして、ミンダナオプロジェクトに携わるチームの紹介をいたします!
今回のプロジェクトでは、JICAの事業委託という形態で、プラネットファイナンスジャパンが事業実施者、ミンダナオ・マイクロファイナンス・カウンシルがカウンターパートとして、共同して事業を推進いたします。さらに、現地業務補助員として、プラネットファイナンス・マニラオフィスから、3名のマイクロファイナンス専門家が事業に携わります。
まずは、プロジェクト全体の統括者であるプロジェクトマネージャー、プラネットファイナンスジャパンの長友留奈(ながともるな)からご挨拶です。
はじめまして。プロジェクトマネージャーの長友留奈です。
学生時代にムハメド・ユヌス氏のグラミン銀行の取り組みを本で読んで以来、日本人として、日本からマイクロファイナンスセクターの発展に貢献することが長年の夢だったので、今回JICAの草の根技術協力事業という形でマイクロファイナンスプロジェクトのスタートがきれたことを大変嬉しく思っています。
本プロジェクトの対象国であるフィリピンは、政府が80年代よりマイクロファイナスの推進に積極的に取り組んできたため、マイクロファイナンスに適した政策環境が整っているといわれています。その甲斐あり、フィリピンにはマイクロファイナンス機関が大小合せて5,000ほどあり(*1)、世界的にみてもマイクロファイナンスが発展している国であるといえます。
しかしながら、プロジェクト対象地域であるミンダナオは、同国の他の地域と比較して貧困率が高いにも関わらず、マイクロファイナンスの普及が遅れています。特に、同地域の貧困層の大多数を占める零細農民のフォーマルな金融サービスへのアクセスが限られていることが大きな課題となっています。本プロジェクトでは、このギャップを埋めるべく、チーム一同ミンダナオのマイクロファイナンス機関に対する技術支援に取り組んでいきたいと思っています。
3年間のプロジェクト期間に亘り、アシスタントプロジェクトマネージャーの松浦とともにプロジェクトの進捗を現地よりレポートしていきますので、今後ともどうぞ宜しくお願いします。
(*1) Philippine Country Profile on Microfinance, http://microfinancecouncil.org/resources.htm
11月21日に、マニラオフィスでクリスマスパーティを開催しました!普段は出張ばかりでほとんどオフィスにいない、プラネットファイナンスのエキスパートたちですが、この日、ほぼ全員が集合したため、急遽開催です。(前列中央・長友)
2011.11.16 「プロジェクトについて①‐2(農業マイクロファイナンス)」
年利200%以上の金利負担を強いられることもあるミンダナオの零細農民に対して、貧困削減をミッションに掲げ、年利20~30%の低金利で融資を行うマイクロファイナンスを推進することができれば、農民の所得は向上し、貧困脱出のきっかけとなることができます。しかし、ミンダナオ地域では貧困人口に対するマイクロファイナンス普及率は約5.4%*と、フィリピン全体の普及率約9.8%*と比較して低く、マイクロファイナンスの普及が遅れていることが分かります。(*National Population Census 2007, Family Income and Expenditure Survey, National Statistics Office 2006, Mix Market2009, Mindanao Microfinance Council 2010)
ミンダナオ地域でマイクロファイナンスの普及が遅れているひとつの要因として、既存のマイクロファイナンス機関が零細農民のニーズに合ったサービスを提供できていないという現状が考えられます。
ミンダナオのマイクロファイナンス機関は、貧困削減をミッションに掲げているNGOや協同組合などがありますが、その多くは経営能力が弱く、マニラ等の都市部で成功を収めた零細企業活動向けの貸付方法を、そのままミンダナオでも提供している現状があります。マニラを中心に普及している貸付方法では、雑貨店など毎日ある程度の販売収入がある事業であることを前提に、毎週、あるいは毎月小額ずつ返済することが求められます。それに対し、農民の収入には前回述べたような季節性があり、毎週あるいは毎月返済を求められるような商品は利用することが難しいのです。高利貸しの代わりに金利の低いマイクロファイナンスを零細農民が利用でき、よりよい食事や教育、医療へ所得を配分できるようになるために、零細農民の生活実態、ニーズに合ったマイクロファイナンス商品の設計・開発が強く求められています。
今回のプロジェクトでは、零細農民の生活状況と金融ニーズに関する調査を行い、より適したマイクロファイナンス商品を設計し、パートナーMFIに提案します。さらに、将来的な導入に向けた計画策定、パイロット事業ローンチの支援も行います。金融ニーズ調査では、融資だけでなく、預金や保険、送金等幅広いニーズの調査を実施します。
次回は、プロジェクトの2つ目の柱、「借り手の貧困層向けの金融リテラシートレーニングの普及」について解説いたします。
(アシスタントプロジェクトマネージャー 松浦)
2011.11.9 「プロジェクトについて①-1(農業マイクロファイナンス)」
今回より、プロジェクトの3つの構成要素である、「零細農民のニーズに適したマイクロファイナンス商品の設計・導入」「借り手の貧困層向けの金融リテラシートレーニングの普及」「マイクロファイナンス機関に対する社会的パフォーマンス経営評価」について、順に解説していきます。
初回は、「零細農民のニーズに適したマイクロファイナンス商品の設計・導入」に際し、まずはミンダナオの零細農民がどのような現状に直面しているかについて、レポートします。
今回のプロジェクトの対象地域であるミンダナオ島は、フィリピンで唯一台風圏外に位置し、一年を通して熱帯気候の好天に恵まれています。天然ゴム、パイナップル、バナナといった農産物の主要生産地であり、フィリピン国内で消費される食料の40%以上、同国食料輸出の30%以上を生産しています。そうした豊かな資源に恵まれている一方、植民地時代のプランテーションを受け継いだ一部の豪農のみが富を得、多くの農業従事者は土地を持たない小作農民か、零細農民であり、貧しい生活を強いられているのが現状です。
零細農民の多くは、収穫期に作物を販売することで収入が得られる一方、一年のほとんどを占める耕作期、育成期には支出一辺倒になります。その間、家族の病気や災害、結婚等の急な支出があった場合は、インフォーマルな貸金業者からお金を借りることで一時的に凌ぐ場合が多くあります。一般的に、フォーマルな銀行から借入を行う場合は担保や審査が必要であるのに対し、インフォーマルな貸金業者は無担保、審査なしで簡便にお金を借りることができるからです。しかしながら、インフォーマルな貸金業者は月利20~30%(=年利240~360%)といった非常に重い金利負担を強いるため、作物の販売で得た収入の多くを返済に回す必要があり、あるいは返済のために多重債務に陥ることもあり、零細農民をさらなる貧困に導いてしまう可能性があります。
次回は、こういった現状を改善するための、農業マイクロファイナンスの分野での取り組みについてご報告いたします!
(アシスタント・プロジェクト・マネージャー 松浦)
2011.10.25 「社会事業コンファレンス」
10月6日に開催したプロジェクト説明会を受けて、参加いただいたマイクロファイナンス機関(MFI)のほとんどが、熱意のこもった応募書類を送ってきてくれました。今後、カウンターパートのMMCとともに、プロジェクトを実施するMFIの選定作業に入ります。プロジェクト頼みでなく、自分たち自身で組織を改善していきたいという意識を明確に持っていること、また、3年間のプロジェクト期間に耐えうる財務健全性を示していることも重要なポイントです。プロジェクトのカギを握るパートナーMFIの選定、フィールドでの豊富な経験を持つMMCのスタッフとともに、力を入れて行っていきます。
ところで、10月20~21日の2日間で、Peace and Equity Foundationが主催する、 Social ENTERPRISE (社会事業)コンファレンスに出席してきました。
(公式HP : http://www.socialenterprise.ph/)
社会企業家としてフィリピンで活躍するNGO、民間企業、財団等が一堂に会する大規模なコンファレンスです。
今回のミンダナオプロジェクトでは、零細農民のニーズにより適した農業マイクロファイナンス商品の開発・導入支援することを柱のひとつとしていますが、農業技術支援を実施している農業専門家と共同で、零細農民の支援に取り組んでいきたいと考えています。そのため、お互いのニーズが合致する新たなパートナーとの出会いを求め、コンファレンスに出席してきました。
農業技術支援を実施している農業専門家を含め、新しいネットワークを構築できたことはもちろん、気迫あふれるフィリピンの社会企業家の多彩な活動に触れることができ、大いに触発された2日間になりました。
(撮影:Ms. Yoying Pimentel, Maisog Watershed Initiative, Inc.)
(アシスタント・プロジェクト・マネージャー 松浦)
2011.10.14 「プロジェクト説明会の開催」
2011年10月4日~5日に、ミンダナオ島ブツアン市にて、カウンターパートである、ミンダナオ・マイクロファイナンス・カウンシル(MMC)のメンバーと、年間計画の打ち合わせを行いました。さらに6日には、今回のプロジェクトに興味を示していただいた、7つのマイクロファイナンス機関(MFI)から13名の参加者を招待し、プロジェクト概要の説明、および募集要項の告知に関するワークショップを行いました。
MFIとのワークショップでは、MMC代表のジェフ(写真左)がリーダーシップを取り、彼らが現時点で抱える問題点をディスカッションし、発表してもらいました。その後、プラネットファイナンスジャパンの長友から、プロジェクト概要の説明を行いました。
ディスカッションの中で挙げられた問題点の中には、金融リテラシー教育の資金的余裕がない、災害による不作のための返済不履行といったことがありました。今回のプロジェクトでは、MFIへの技術支援によりこういった問題を解決できる可能性があり、参加いただいたMFIのメンバーには大変興味をもってもらいました。
今回のプロジェクトでは、実際の技術導入に関しては2つのMFIのみを対象としていますが、選考されなかったMFIのメンバーも、金融リテラシー教育や社会的パフォーマンス経営評価のワークショップやコンファレンスへの参加が可能です。
また、今回のワークショップの大きな収穫のひとつは、MMCとMFIのメンバーが、互いに信頼関係を持って活動していることを目の当たりにできたことでした。MMCとメンバーMFIの関係が今後も良い方向へ進むよう、今回のプロジェクトをうまく機能させていきます。
(アシスタント・プロジェクト・マネージャー 松浦)
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